貧乏人の経済学 読書メモ yuiseki
これを見た(正確にはトランスクリプトを読んだ)
貧困問題において私たちのこれまでの取り組みではデータを集めることは困難だった
彼女たちは正確なデータを豊富に集められているように見える
なぜ?いかにして?
実行する意味のある実験計画を立案し、確実に遂行し、結果を観察する その他
ソフトウェアエンジニアにできることは2つ考えられる
ソフトウェアサービスの提供による貧困問題への直接介入の効果をランダム化比較試験で検証する
この場合アジャイル開発によってソフトウェアの仕様を変更した場合の効果測定も考慮する必要が生じる
※ランダム化比較試験はABテストよりも厳密
ソフトウェア開発によって貧困問題に対するランダム化比較試験実験を支援する
ランダム化比較試験のための無作為抽出、データの収集、入力、分析を支援する
そういうBIツールは無料でいくらでも高品質なものが既にありそうな気も
第一章
問題 が 大き すぎ て、 手 の つけ よう が ない と 思える
ペンシルバニア 大学 で 最近 行なわ れ た 実験 は、 人 が 問題 の 規模 に すぐ に 圧倒 さ れ て しまう こと を 実証 する もの でし た
この 学生 たち の 反応 は、 貧困 といった 問題 に 直面 し た とき、 多く の 人 が 感じ て いる 典型的 な 気持ち を 表し て い ます。 とっさ の 直感 は、 気前 よく しよ う という もの です。 特に かわいそう な 7 歳 の 女の子 に 直面 し たら、 鷹揚 になり ます。 でも ペンシルバニア 大学 の 学生 たち と 同様、 ちょっと 考える と、 実は 意味 ない よ、 と 思っ て しまい がち です。 寄付 し た ところ で 大海 の 一滴 だ し、 その 大海 も ダダ 漏れ 状態 なの でしょ う から。 でも 本書 は、 さらに もう一度 考え て みる よう 薦める 本 です。 貧困 に対する 闘い が あまりに 巨大 だ という 気持ち を 抑え て、 貧困 対策 という 課題 を 具体的 な 問題 の 束 として とらえ、 それ を きちんと 見極め て 理解 すれ ば、 一つ ずつ 解決 し て いける の だ と 考え て 欲しい の です。
残念 ながら、 貧困 について の 論争 は 通常 は そんなふうに 構築 さ れ ては い ませ ん。 下痢 や デング熱 に どう 対応 する のが 最高 かを 論じる かわり に、 もっとも 声 の 大きい 専門家 たち の 多く は、「 大 問題」 にばかり かまけ て い ます。 貧困 の 究極 の 原因 とは 何 か? 自由市場 を どこ まで 信頼 す べき か? 民主主義 は 貧困 者 に とっ て よい もの か? 外国 援助 は 役に立つ のか、 等々。
だれ を 信じ たら いい の でしょ う? 援助 で 問題 が 解決 する という 人 でしょ う か? それとも 援助 は 事態 を 悪化 さ せる という 人?
例えば 世界 の 百 数 十 カ国 の データ を 見る と、援助 の 多い 国 が そう で ない 国 より 成長 が はやい わけ では ない こと が わかり ます。 これ は 援助 に 効果 が ない という 証拠 として 解釈 さ れる こと が 多い の です が、 実は 正反対 の こと を 意味 し て いる の かも しれ ませ ん。 援助 は 彼ら が 大 惨事 に 陥る のを 救っ て くれ た の かも しれ ず、 援助 が なけれ ば ずっと ひどい こと に なっ て い た かも しれ ない の です。 とにかく わかり ませ ん。 単に、 大規模 に 憶測 を し て いる だけなの です。
援助 論争 に 参加 し て いる 人々 の なか で、 貧乏人 を 助け られる なら 助ける べき だ、 という 基本 的 な 前提 に 本気 で 反対 する 人 は い ませ ん。
大きく 意見 の 相違 が 出 て くる のは、 その 先 の「 貧乏 な 人 を 助ける 有効 な 方法 が わかっ て いるだろ う か?」 という 問題 に 話 が 進ん だ とき です。 他人 を 助けろ という シンガー の 議論 で 暗黙 の 前提 と なっ て いる のは、 助け 方 は すでに 知っ て いる という こと です。
人々 は 蚊帳 を 無料 で もらっ たら それ を 無 価値 と 思う( そして 使わ ない) だろ う、 という の です。 そして 使っ ても、 蚊帳 を もらう のに 慣れ て、 蚊帳 を 有料 で 買わ なく なる かも しれ ませ ん。 あるいは 他 の 物 も、 補助 なし では 買わ なく なる かも しれ ませ ん。 する と、 まとも に 機能 する 市場 が 崩壊 し ます。 モヨ は、 ある 蚊帳 販売 業者 が、 無料 蚊帳 配布 プログラム で 大 打撃 を 被っ た 話 を し て い ます。 無料 配布 プログラム が 終わる 頃 には、 どんな 値段 でも 蚊帳 を 売っ て いる 人 は い なく なっ て しまっ た の でし た。
したがって、 こうした 問題 に 答える いちばん きれい な 方法 は、 医薬品 分野 で 新薬 の 効果 を 計る のに 使わ れる、 ランダム 試行 を まねる こと です。
貧乏人 も、 他 の みんな と 同じ よう な 暮らし で、 単に お金 が 少ない だけなのか、 それとも 極度 の 貧困 生活 には 根本的 に 何 か ちがう もの が ある の でしょ う か? そして 特殊 な 点 が ある なら、 貧乏 な 人 が 貧困 に とらわれ て いる のは その せい なの でしょ う か?
向こう が ほし がっ て い ない もの を、 無理強い し ても 無駄 です。 子供 が 学校 に 通い た がら ない のは、 教育 を 受け ても 意味 が ない からに ちがい ない、 という わけ です。
所得 や 財産 を 急速 に 殖やす 手立て が、 ほとんど 投資 余力 の ない 人 には 制限 さ れ て いる のに、 多め に 投資 できる 人 には 急 拡大 する よう な 状況 では、 貧困 の 罠 が 確実 に 発生 する、 という こと です。
単純 な グラフ に こめ られ た 理論 から 得 られる、 もっとも 重要 な メッセージ は つまり、 理論 だけでは 不十分、 という こと です。 貧困 の 罠 が 実在 する か という 問題 に 本気 で 答える なら、 現実 の 世界 を うまく 表し て いる のが、 どっち の グラフ なのかを 知る 必要 が あり ます。 そして この 評価 は 事例 ごと に やる 必要 が あり ます。 肥料 に 注目 し た お話 で あれ ば、 肥料 市場 について 事実 を 知る 必要 が あり ます。 貯蓄 の 話 なら、 貧乏 な 人 の 貯蓄 方法 を 知ら なく てはなり ませ ん。 栄養 や 健康 の 話 なら、 それ を 調べ ましょ う。 壮大 で 普遍的 な 答え が ない という のは、 ちょっと 不満 に 思える かも しれ ませ ん が、 でも 実は それ こそ まさに 政策 立案 者 が 知り た がる べき こと なの です ─ ─ つまり、 貧困 に はまっ て しまう 方法 が 何 万 と ある という こと では なく、 その 罠 を 作り出す 主要 な 要因 が ごく 少数 で、 そういう 問題 を 改善 すれ ば 貧乏 な 人 が 解放 さ れ、 富 と 投資 を 増やす 美しい サイクル に 入れる、 という こと を 知る べき なの です。
わたし たち には 先達 に 比べ て 二つ の 優位 性 が あり まし た。 まず、 いまや 多く の 貧困 国 について、 以前 は なかっ た よう な 質 の 高い データ が あり ます。 第二 に、 新しい 強力 な ツール が あり ます。 ランダム 化 対照 試行( RCT) は、 地元 パートナー と 協力 を 得 て、 研究 者 たち が 理論 を 試す 大規模 な 実験 を 実施 できる よう に し て くれる の です。 RCT では、 蚊帳 の 調査 の よう に、 個人 や コミュニティ が ちがっ た「 処置」 に 無作為 に 割り当て られ ます。 この 場合 の 処置 とは、 ちがっ た プログラム や、 同じ プログラム の 一部 を いろいろ 変え た もの を 指し ます。 各種 の 処置 に 割り当て られ た 個人 は、 完全 に 似 た よう な 存在 なので( なぜ なら 無作為 に 選ば れ て いる から です)、 結果 に 差 が 出 たら、 それ は すべて 処置 の 影響 という こと になり ます。 実験 一つ だけでは、 その プログラム が 普遍的 に「 効く」 か どう か 決定的 な 答え にはなり ませ ん。 でも 同じ 実験 を 何度 も、 場所 を 変え て み たり 介入 の 細部 を 変え て み たり( その 両方 を 変え て み たり) でき ます。 それら を まとめる と、 結論 の 頑強 さも 確認 でき ます( ケニア で 効く 手法 は マダガスカル でも 効く だろ う か?)。 また データ を 説明 できる 理論 の 可能性 も 絞れ ます( ケネディ の 邪魔 を し て いる のは 何 だろ う? 肥料 の 値段 か 貯金 の むずかし さか?)。 新しい 理論 を 使っ て 介入 や 新しい 実験 を 設計 できる し、 以前 は 不思議 だっ た 結果 も 理解 し やすく なり ます。 そう やっ て、 貧乏 な 人 が 本当は どういう 暮らし を し て おり、 どこ で 手助け が 必要 で、 どんな 手助け は 不要 かが、 もっと しっかり し た 形 で だんだん わかっ て くる の です。
「 きみ たち は 証拠 とやらに 耽溺 し 続ける が いい よ、 その間 にも こっち は 仕事 を こなさ なきゃ いけ ない ん だ から」。
貧乏 な人 の 具体的 な 問題 を 深く 理解 し て、 そこ に 介入 する 効果的 な 方法 を 見つける のが 最高 の 方法 なの だ と 思っ て い ます。
その調査はどれも、高度な科学的厳密さを持ち、データの語ることを真撃に受け入れ、貧乏
の生活に関連した、特定の具体的な問題に的を絞っています。そうしたデータを使って
答えたい問題の一つは、貧困の買を懸念すべきなのが、いつどんな状況なのか、ということで
す。貧困の買は一部の領域では見られますが、見つからない場合もあるのです。有効な政策を
設計するには、それぞれの問題について正しい答えを得るのが肝心です。本書では、まちがっ
た政策が選ばれてしまった例も数多く示します。それは悪意や汚職のせいではなく、単に政策
立案者たちが、まちがった世界像を抱いていたせいなのです。買などないところに貧困の買が
あると思っていたり、目の前にある別の買を見過ごしていたりしたせいなのです
でも本書のメッセージは、貧困の買をはるかに超えるものです。これから見るように、専門
援助関係者、あるいは地元政策立案者のイデオロギーideology、無知 ignorance、惰性
inertia||三つのII|が、政策の失敗や援助の低効果の原因となっています。世界をよくす
ることは可能です||たぶん明日には無理でも、手の届く未来には。でもそれには、ずぼらな思考ではダメです。本書を通じて、わたしたちの辛抱強い一歩ずつのアプローチこそが貧困と
闘う方法として効果的なだけでなく、世界をずっとおもしろい場所にする方法なのだ、という
ことを納得していただければと思います。
はじめに
貧乏な人の経済学は、貧困の経済学と混同されることがあまりに多いのです
見聞き し た こと を 単純 な モデル に 当てはめよ う と 苦闘 し まし た。
得 られ た 証拠 を 根拠 に 手持ち の 理論 を 見直し たり、 あるいは 放棄 し たり する 必要 も しばしば 生じ ます。 でも 放棄 する のは さい ご の 最後 で、 なぜ その モデル が うまく いか ない かを ズバリ 理解 し て、 それ を 手直し し て 世界 を 記述 でき ない か 考えよ う と あれこれ 努力 も し まし た。
驚く のは、 これ ほど 貧乏 な 人 たち でも、 ほとんど あらゆる 点 で わたし たち みんな と 何 も 変わら ない という こと です。 同じ 欲望 と 弱み を 持っ て いる の です。 貧乏人 は、 他 の みんな と 比べ て 合理性 に 劣る わけ でも あり ませ ん ─ ─ その 正反対。 まさに 持ち物 が あまりに 少ない から こそ、 彼ら は 選択 を きわめて 慎重 に 考える こと が 多い の です。 生きる だけでも、 高度 な エコノミスト に なら なく て はやっ て いけ ない の です。 それなのに、 わたし たち と 貧乏 な 人々 の 生活 は 酒 と 肴 くらい かけ離れ て い ます。 そして これ は、 わたし たち の 生活 の なか で、 みんな が 当然 だ として 考え も し ない 各種 の 側面 の おかげ が 大きい の です。
これ が 総じて 何 を 意味 する かと いえ ば、 自分 の 技能 を 最大限 に 活かし、 家族 の 未来 を 確保 する にあたり、 貧乏 な 人 は ずっと 多く の 技能 や 意志 力 や がん ばり が 必要 だ、 という こと です。 そして その 裏面 として、 わたし たち が ほとんど 考え ず に すむ、 ちょっとした 費用 や つまらない 障害、 わずか な まちがい が、 貧乏 な 人 の 人生 では 実に 大きい の です。
正しい レバー を 押す だけで 巨大 な ちがい が 生じる けれど、 その レバー が どれ かを 見極める のは むずかしい。 何 よりも、 一本 で すべて の 問題 を 解決 する よう な レバー が ない のは はっきり し て い ます。